池田亀鑑が残した、質量ともに膨大な業績に、現代の研究者ははかり知れない恩恵を受けていることはいうまでもない。『伊勢物語』、『土左日記』、『源氏物語』と、次々と古典を近代科学の視点から分析し、文献学の方法論を確立していった。本文研究者のイメージが強いものの、古典の解釈、観賞は豊かな知識を背景に読み解き、少年少女向けの小説を書くなどロマンティストでもあった。池田亀鑑の研究を継承するだけではなく、古典文学のさらなる展開への奨励と普及のために、このような賞を設けることはすばらしいことと思っている。

文学研究の基礎を支える資料を整理し、成形し、提供する営為には、多大な時間と労力と根気が必要である。そして、こうした作業や仕事にこそ、弛まぬ努力と継続への理解と応援が必要である。池田亀鑑賞は、日頃の地道な調査研究活動に光を当て、さらなる励みと新たな目標設定を支援するところに意義があると思っている。達成したものばかりではなく、進行しつつあるものも含めて、研究環境の整備に貢献した仕事を顕彰したいと思っている。

池田亀鑑は、若き日に生地鳥取県日野郡より国文学への志を抱いて上京し、幾多の苦難を乗り越えて東京大学国文学科を卒業、以来寸暇も惜しみ学問一筋に六十年の人生を疾走しました。その間、常にふるさとの人々、ふるさとの山河を懐かしみ、いつの日かふるさとの地を踏むことを夢みておりました。座右の銘とした言葉を刻む文学碑が、ふるさとの町によって建立されたことに続き、このたび、このような賞が創設されたことを、再びふるさとに帰ることなく学問に没した亀鑑もとりわけ喜んでいることと思います。本賞が若い研究者の励みとなり、国文学研究がますます発展することを願っております。
日本古典文学の研究に近代的な文献学の方法論を確立した池田亀鑑博士。私などには歴史上の人物だが、博士と同郷の先師稲賀敬二先生は晩年の高弟。学問の継承などと言うのはおこがましいが、私は池田博士の孫弟子にあたることを意識し、秘かに誇りとしてきた。その池田博士の名を冠する賞の選考には、亡き師の代理のつもりで加わらせていただくことにした。緻密・堅実な基礎研究でありながら芳しい文学の香気がただよう論考の出現を期待している。
鳥取県の山間で生まれ育った池田亀鑑は、同県の尋常高等小学校訓導から教育活動をスタートさせた。その後の研究、後進の育成には目覚ましいものがあるが、その道のりが決して平坦なものでなかったことはよく知られている。国文学の危機が叫ばれる今、地道な努力によって古典文学研究の基礎を築いた池田亀鑑の名を冠し、「ただ至誠にあり」との思いを継承せんとする賞がその生誕の地で創設されることは、非常に意義深いことと思う。
池田亀鑑の人生から窺える様々な事象は、複雑な近代日本のあり様と「国文学」という学問の道程を私たちに色濃く伝えてくれる。池田の学問的情熱の性質は、前近代から構築されてきた地方と中央の文化的・学制的な差異・相違をよく表わすものであるし、また、戦前・戦中・戦後という大きな歴史的転換を生き抜いた池田の職務及び社会生活からは、各時代ごとに日本が抱えて来た問題を明確に窺い知ることができる。池田の文献学の巨匠としての位置付けは確かであるが、広く「国文学」の辿った歴史にも興味を抱いている。
 
※敬称略
 









 
 
 
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